2025年09月03日 (水)

大日本印刷株式会社との共同研究を実施 ー心身のケアに読書を活用ー

児童学部子ども心理学科の初澤宣子講師が、大日本印刷株式会社(DNP)と2025年4月に共同研究契約を締結し、文学作品等の「物語」が読者に与える心理的効果を可視化する「物語の処方箋ブックリスト」の作成に向けた研究を実施しています。"読書"が心身の健康に与える効果を調査し、生活の質(QOL:Quality Of Life)の向上につながる「社会的処方(social prescribing)」1としての有用性を検証していきます。

【共同研究のポイント】
・この共同研究では主に日本文学を対象とした「物語の処方箋ブックリスト」の開発とその有用性を検証していきます。これにより、読書のさらなる可能性を引き出し、文化活動と心身の健康増進をつなぐ新たなアプローチの確立を目指します。

〈「物語の社会的処方」についての概念図〉

共同研究.png

・読書には、認知機能の維持・向上、ストレス軽減、語彙力や理解力の向上など、心身に良い多面的な効果があると言われています。特に文学作品・物語は、登場人物への共感を通じて、読者に多様な感情体験を提供します。こうした読書の効用を「社会的処方」として活用する取り組みも国内外で進められています。イギリスの「Reading Well」*2という先行事例では、医師が図書館と連携し、健康に関する課題の解決に向けて、書籍を薬のように「処方」する仕組みが導入されています。

・この研究は、これまでその価値を可視化することが難しかった読書とウェルビーイングの関係を探求し、その成果を広く社会に役立てることを目指しています。読書がもたらす影響を体系的に分析し、社会全体の健康促進に貢献する新しいモデルである「社会的処方」の仕組みを事業として広げることを目指していきます。

*1 社会的処方:従来の医学的治療に加えて、地域の社会的リソースや活動への参加を推奨する取り組みを指します。
*2 「Reading Well」について →
https://readingagency.org.uk/get-reading/our-programmes-and-campaigns/reading-well/

【児童学部子ども心理学科】