2025年06月16日 (月)

さあ、フィールドに出かけよう!

 初めまして。新任の澤浦亮平と申します。
 私は昨年度まで、沖縄県立博物館・美術館で人類学分野の学芸員をしていました。この春、本学の教育学科に着任しまして、博物館概論、博物館実習といった学芸員資格関連の科目と文化人類学、考古学等の科目を担当いたします。
 専門は、遺跡から出土するヒトや動物の骨を研究する骨考古学(こつこうこがく)という分野です。特に、日本列島や周辺地域の旧石器時代(日本列島ではおよそ3.8万年前から縄文時代の始まる1.5万年前まで)に関心を持っています。
 学部と修士は文学(考古学)、博士は歯学(解剖学)、その後、古脊椎(こせきつい)動物学、就職は博物館(人類学)、そして現在は鎌倉女子大学(教育学)と、様々な専門分野を経験してきました。
 このような経歴を歩むきっかけになったのは、2006年の夏、私が学部の2年生の時に青森県下北郡東通村尻労安部(しつかりあべ)洞窟の発掘調査に参加したことです。
 津軽海峡に面した小さな民宿で、様々な分野(先史考古学のみならず形質人類学、遺伝学、古生物学、同位体生態学、材料科学など)で活躍する専門家や他大学の学生と寝食を共にしながら、本州最北部の石灰岩地帯にある小さな岩陰に、日本列島に居住する私たちの起源を求めて、ともに汗を流しました。草刈り、テント設営、機材の準備、発掘区域の設定や測量、掘削(くっさく)、掘削した土の水洗選別(土に埋もれた小さな遺物まで洗い出す作業で実はこれが一番大変で重要です)、大きな石灰岩礫(れき)の削岩や運搬、出土した遺物の管理、さらには昼食の炊き出しの手伝いまで、参加するまでは想像しなかったような作業が目白押しでした。夜は、宿の裏手の砂浜で波音を聴きながら美しい星空と遠くに見える漁火(いさりび)を仲間たちと眺め、様々なことを語り合いました。これまで出会ったことのない人たちが集う学際性に富んだ発掘調査だったので、すべてが新鮮でとてもワクワクしました。

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制作:ハト

 調査を終え大学へ戻ってからも、発掘した遺物や調査記録を参加学生で地道にコツコツと整理し、青森県の埋蔵文化財に関する調査報告会で発表するための資料としてまとめていきました。この発掘調査への参加によって、切磋琢磨する仲間と夢中になれることに出あえた喜びは、他には代え難い財産になっています。
 これまでのところ、この調査の当初の目的であった、旧石器時代のヒトの姿・形や由来を知るために重要な人骨の発見にはいたっていませんが、狩猟具と見られる石器と狩猟対象と見られる動物骨が見つかっています。発掘調査とその後の調査研究によって新しく見えてきた重要な知見は、尻労安部洞窟を利用した旧石器時代人が、従来想定されていたナウマンゾウやオオツノジカといった絶滅大型動物ではなく、意外なことに、ノウサギなど身近にいる小さな動物を積極的に利用していたらしい、ということです。こうした新しい知見にたどり着くまでの一連のプロセスは何とも楽しく、貴重な経験となり、今の私につながっています。
 何が自分の歩む道を決めるきっかけになるのかは人それぞれですが、新しいことに挑戦しようという時には、キャンパスを飛び出して、様々なバックグラウンドを持つ人々との交流をもたらすフィールドを求め、ぜひ出かけてみてください!
 鎌倉女子大学で新しいフィールドを開拓しようとする学生の皆さんとの協働を楽しみにしています。これからどうぞよろしくお願いいたします。





【教育学部教育学科】