2023年09月04日 (月)

書かれない歴史 ~考古学や民族学を学んでみませんか~

考古学や民俗学というと、歴史の分野だと感じるでしょう。しかし、実際には骨や貝殻、花粉や木片、食べ物の残り滓など、ありとあらゆる資料を研究対象とします。歴史には文字で記された狭い意味の歴史の他、文字で記されない広義の歴史もあり、考古学や民俗学はどちらかというと後者の研究分野なのです。

以前、和船の調査をしていた時のことです。毎日のように和船づくりについてお話を伺っていた90歳近い船大工さんが亡くなられました。その時に私は、文字で記されない歴史はこうして永遠に忘れ去られてきたのだということを痛感しました。私たちにできることは、知り得た歴史を書き残すこと、そして何よりも残されたモノ資料に失われた歴史を読み取ることなのです。ですから、私たちの仕事はフィールドワークが重要です。過去の痕跡は身近なところに散在します。

ところで、大船キャンパスからも貴重な資料が発見されたことをご存知でしょうか?2008522日、キャンパスの中庭で労作作業を行っていた学生が偶然発見したのは、なんと石器でした。私のところへ持ち込まれ、詳しく調べたところ約12千年前の縄文時代草創期の有舌尖頭器ということがわかりました。狩りに使われたチャート製の槍先で、精巧なつくりです。何故このようなところから出土したのか、出土時の状態、直前の天候、キャンパス建設時の工事図面などにも遡って情報収集しました。その結果、建設工事時に他地域から持ち込まれた土砂に紛れ込んだものではないこと、むしろもともと東山斜面にあったものが前日の豪雨で流れ落ちた可能性が高いことがわかりました。

皆さんも身近なところをじっくり観察してみてください。面白いものが見つかるかもしれませんよ。

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左:牧野久実 撮影 右:桜井準也、牧野久実 2008「鎌倉女子大学大船キャンパス採集の有舌尖頭器」湘南考古学同好会113号 図4



【教育学部 教育学科】